マニラ旅行 part-13 チップ

彼も主人公の一人です。
彼も主人公の一人です。

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私がもう少し若く、そして気温がもう少し低ければマニラの街中をブラブラ歩いてみる気にもなるのでしょうが、幸か不幸かまったくそんな気になりません。

そうすると、朝食後に足の向く先は当然プールサイドということになってしまいます。

この日は日曜日ということでプールは親子連れで大賑わいでした。

私もそんな様子を見ながらビールを楽しんでいたのですが、突然目の前で泳いでいた5~6歳の女の子の浮き輪が外れ、体が水の中に沈んでしまったのです。

これは、マズイと腰を浮かした。その時です。

どこで見ていたのか、お馴染みAちゃんともう一人のプールガードがユニフォームのまま、もの凄い勢いでプールに飛び込みその女の子を助け上げました。

それこそ、アッと云う間の出来事でした。

幸い女の子は水をチョッと飲んだ程度で大事には至りませんでしたが、思わぬハプニングにプールサイドは騒然としてしまいました。

そのざわめきの中、何事も無かったかのように着替えに向かう二人の姿に称賛の拍手が鳴り止まなかったのであります。

私も映画のシーンのような救出劇を目の当たりにして鳥肌が立つくらい感動してしまいました。

そして、何よりも嬉しかったのは私が贔屓にしているAちゃんが、この救出劇に一役買ったということです。

帰りがけ、いつもと変わらぬ笑顔で見送ってくれるAちゃんに些少ですがお小遣いを渡してあげました。

もちろん、婉曲に断られましたが、こんな大活躍をした彼女に何もしないでこの場を去るなんていうことは日本男児として到底できることではありません。

無理矢理紙幣を手に握らせプールを後にする私の背中には彼女の熱い視線がいつまでも絡みついていました。

たかだか、この程度の金額で何をそこまでと思っていたのですが、部屋に戻ってみて、その意味が解りました。

間違って一桁多い金額の紙幣を渡してしまったのです。

相変わらずお恥ずかしい限りですが、まずはメデタシ、メデタシいうことで。