「孤高のアスリート」

私にとってスポーツクラブとは、健全なる精神と肉体の訓練の場であり、いわば神聖な道場として捉えていますから、ひとたびトレーニングルームに入れば、ごく親しい友人とだけ会釈を交わす程度にとどめ、その後は一切無駄口を叩くこと無く、ただひたすらトレーニングに励むことにしています。

その間は無我の境地にありますから、顔見知りの会員やスタッフから挨拶されても全く気が付きません。

そんな私の不遜にも見える態度は、「お高く止まっている!」、「変人だ!」などと、一部の心無い会員から非難を浴び続けてきました。

しかし、周囲の雑音に臆することなく、ただ、ひたすらトレーニングに集中する真摯な私の姿に感動した他の会員からは、いつからともなく「孤高のアスリート」と呼ばれるようになりました。

もちろん、この様な称号を貰って悪い気はしないのですが、最近では私のトレーニング姿を一目見ようという会員に周りを囲まれてしまうものですから、迂闊に力を抜くことが出来なくなってしまいました。

そして、たまには早目に上がりたいと思っていても、周囲の目が気になって、ついついオーバーワークになってしまうのです。

困りました。

折角頂いた名誉ある称号を返上する訳にもいかず、かといってこのままでは身体を壊しかねませんし、どうしたものか途方に暮れておりますわ。