幻の茶器

長年にわたり愛用していた湯飲み茶わんの取っ手が折れて、使えなくなってしまいました。

これは、戦時中私が諜報活動のため中国に潜んでいた頃、上海の骨董品点で買い求めた想い出の品でした。

確かそのころの日本円で30圓くらいでしたから、ごく普通の湯飲みとして使っていたのですが数年後、何気なく読んでいた中国の古い文献により、この茶碗がとんでもない掘り出し物だったことが分りました。

それによると、これが作られたのは遥か昔、明の時代のことで当時宮廷の晩餐会に使用されていた茶器の一つで、当時金に困った召使が二束三文で売り飛ばしてしまったいわくつきの名品だったのです。

それが、好事家の間では『幻の茶器』と評判となり一時は数百万円の値が付いたこともあったそうですが、どうして上海の片田舎に流れ着いてしまったのでしょうかね?

確かに薄桃色を基調とした微妙な色具合といい表面の光沢といい、手に取るだけで格調高い気品が感じられたものです。

不遇の時代、何度も売却を考えましたが長い間使っている間に愛着が湧いてしまい、手放すことなく今日まで大事に使ってきたのですがね・・・。

″形あるものは必ず壊れる″とはいえ、やはりショックです。

さて、早急に代わりになるものを探さなければなりません。

ジムの帰りにダイソーにでも行ってみますかね!